繁殖場のもう一人のお母さん

繁殖場に行くと、ちょうど牛たちの様子見を兼ねた餌やりの最中でした。
「早期発見、早期治療が大切なんですよ」と話す、砂田さん。彼女は繁殖場のもう一人のお母さん。

安堂畜産の牧場では、お母さんと子牛は一定期間同じマスの中で過ごし、母乳で育ちます。「母牛から乳がちゃんと出ていて、子牛はそれをちゃんと飲めているのか。それをよく観察していないと見逃してしまうんですよ」。お腹いっぱいで寝ているのか、元気がなくて横になっているのか…。様子の違いを見極めるのが難しいそうです。

生まれてすぐに母牛から離され、人間の手で決まった時間にミルクを与える。それはとても管理しやすいのだとか。けれど、子牛を大きくするのを目的にミルクを飲ませて…。
「これは私の経験だけですが、母乳で育つ子牛は、病気する子牛が少ないように思うんです」と砂田さん。それは自然の流れで、人間でも同じことが言える。だから、ここで生まれる子牛たちは、極端に大きくは育たないけれど、病気もなく元気いっぱい。

以前は、過保護過ぎて、少しの熱で心配になり獣医さんに連絡していたという。「それが重なると獣医さんに怒られることもあるんです」と苦笑い。でも、小さな変化を見過ごすと、明日には取り返しのつかないことになるかもしれない。「牛たちを大切にしてあげたいんです。誰も気が付いてあげられないから。ほかの牛が『この子体調悪いよ!』教えくれたいいんですけどね(笑)」と、その目は母親そのもの。

自然の流れの中で、今日も子牛たちは愛情をたっぷり注がれすくすくと育っていました。