牛画像 牛ホルモン画像

フリーマーチンの熟成肉に励まされて

打合せの途中、おもむろに立ち上がった安堂光明会長。
しばらくして戻ってきたその手には2枚のステーキ肉がありました。
「これはホルスタインの熟成肉でね。フリーマーチン。つまり乳牛としては役に立たない牛でね」
「フリーマーチン?」
その聞きなれない言葉に記者は反応しました。

ホルスタイン(フリーマーチン)のサーロイン
▲ホルスタイン(フリーマーチン)のサーロイン

不妊の乳用牛

フリーマーチン(Freematin)とは、オスとメスの双子(異性多胎)が生まれたとき、メスの方の生殖器にかなりの確率で異常が起こり、メスが不妊になってしまう現象です。もう少し詳しく説明すると、胎盤のなかで血管が結合してしまい、メスにオスの血液が混ざることにより、繁殖機能が正常に発達しなくなるのだそうです。なお、牛以外にはほとんど発生せず、ましてや人間には当てはまらないとのこと、ご安心を。
フリーマーチンとして生まれたホルスタインのメスは、妊娠できないために牛乳を生産できず、役立たずの烙印を押されます。よってすぐに処分される場合もあれば、肉用牛として肥育され、出荷されることもあります。
さて、このフリーマーチンのお肉ですが、そもそも双子の発生率自体が1%程度です。すなわち、このお肉はとても希少なのです。しかも、通常のホルスタインが10年くらい働いた後で肉用になるのと比べて、この牛は生まれてすぐに肥育されてお肉になります。その若さもまた、希少性を高めていると言えます。
今回はこのフリーマーチンを、しかもドライエイジング(乾燥熟成)により40日前後熟成させた熟成肉としてご提供いただきました。フリーマーチン×熟成肉の味わいやいかに!?

ナッツの香りにつつまれて

まずは熱したフライパンに、脂身を擦り付けるようにして脂を溶かしていきます。
ジューという音とともに白い煙が立ち込め、熟成肉に特異なナッツの香りがしてきました。
スキっ腹にはたまらない香りです。
2枚のステーキ肉を同時に焼きながら、片方はレアにして、もう片方は長めに焼いてみました。

熟成肉を焼くと、独特なナッツにも似た香りが立ち込める
▲熟成肉を焼くと、独特なナッツにも似た香りが立ち込める

実食!そのお味やいかに…

フリーマーチン(熟成肉)のステーキ。上がレアで、下が長めに焼いたもの
▲フリーマーチン(熟成肉)のステーキ。上がレアで、下が長めに焼いたもの

まずは長く焼いた方を口に入れました。見た目もそうですが、少しパサパサした感じがしましたが、かみしめると濃厚な赤身のうま味が感じられました。噛み応えがありながらも、そこは熟成肉です。
決して硬くはありません。ちょっと焼き過ぎたのか、表面を少し焦がしてしまったのが残念でした。

次に短く焼いたレアを口に入れました。こちらは口のなかでプリプリしながらも、噛めばジュワーと肉汁が口に広がりました。濃厚な赤身のうま味はもちろん、脂身も甘くてとても美味しくいただけました。スタッフにも試食してもらいましたが、みんなレアに軍配を上げたのでした。

熟成の賜物

実のところ、ホルスタインのしかもフリーマーチンだからと言って、特別に味わいに違いがあるのかと言うと、それは記者にはわかりませんでした。ただ、これまで無角和牛やジャージー牛などの熟成肉を試してきて、確実に言えることは、熟成肉に加工すると、肉質が柔らかくなり、赤身肉のうま味が濃厚になるということ。正直、焼き過ぎないという焼き方さえ間違えなければ、どの熟成肉も味わい深くてとても美味しいのです。
個人的には、黒毛和牛の霜降りサーロインよりも、熟成肉の赤身肉の方が断然好きです。中年という歳のせいかも知れませんが…。

さて、今回のフリーマーチンですが、それが「フリーマーチン」と表示されて肉屋さんの店頭に並ぶことはまずありません。
希少な牛肉を提供いただいた安堂会長に感謝しながら、最後の一口をほうばりました。
乳牛として役にたたなくても、立派に肉牛として、しかも熟成させることでさらに美味しくなって、幸せを運んでくれる。なんだか、フリーマーチンに励まされたような気持になったのでした。

安堂畜産の熟成肉は「肉のこーべや玖珂店」にて販売しています。冷凍ならいつでも在庫があるので、ぜひ、お試しください。今までに味わったことのない美味しさに出会えますよ。

では、牛肉珍味の旅はまだまだ続きます。