焼肉だけじゃない!栄養満点のハツ

「今回はこれにしてみますか?」と安堂光明会長が手にしていたのは、ハツ。牛の心臓です。当たり前ですが、1頭の牛から1つだけ。だいたい2kgが採れるそうです。
今回、提供いただいたのはその1/4の500g。焼肉で食べた時の臭みのない美味しさを思い出しました。しかし、それ以外の料理は思いつきません。
そこで今回は、焼肉以外の料理にも挑戦してみることにしました。

下処理前のハツ
▲下処理前のハツ(全体の1/4くらい)

定番の焼肉に珍味発見

お店で目にするハツには脂身は全くありませんが、それは下処理後の状態です。今回提供いただいたものには、白い脂が付いています。いつもなら、ダイエットの大敵だからと、筋と一緒に削ぐところですが、思いとどまりました。というのも、この脂が付いたハツが「美味しい!」という記事をネットで見つけたからです。
その脂付のハツは採れる量が少なくて貴重。アブシン(脂と心臓)という名前まで付いています。そのアブシンを慎重に切り出して、脂の付いていない普通のハツと食べ比べしてみることにしました。

焼肉用にカットしたハツ
▲焼肉用にカットしたハツ。手前が脂付(アブシン)

アブシンは脂が焼けて溶け出るからでしょう。網に付くこともなく、焼きやすいのですが、油断するとせっかくの脂身が消えてしまうから注意が必要です。

まず、普通のハツを食べてみると、これはこれで濃厚な味わい。臭みもなくて、美味しくいただけます。特に塩を付けなくても、ハツはミネラルが豊富だからでしょう。塩味とともに旨味を感じます。
さて、満を持してアブシンを塩も付けずにいただきました。噛むとジュワッと脂の旨味が口に広がりました。癖のない脂の美味しさとハツの濃厚な味わい。一緒に味見したスタッフも「ああ、こっちの方が美味しいですね」と、意見は一致したのでした。
いつか焼肉屋さんに行ったら、「ハツはハツでも、アブシンあるかなぁ」なんて言ってみたいものです。

絶品、ハツのタタキ(少しローストビーフっぽい)

本当はタタキを作るつもりでした。しかし、表面に焼き目を付けた後で、フライパンに蓋をしてほんの10分くらい放置してしまったがために、肉塊のなかにも少し熱が通ったようです。だから、タタキとローストビーフの中間のような料理が出来上がりました。
なお、作り方は、味濃いめの我流です。詳しくは「トウガラシ」の回をご覧ください。

牛ハツのタタキ(ちょっと焼きすぎ)
▲牛ハツのタタキ(ちょっと焼きすぎ)

見た目にも美味しそうなピンク色のハツ。口に入れて噛むと、焼肉とは全く違う食感です。なんというか少しコリコリするような感じです。そしてさらに濃厚な味わいがします。ハツの刺身もまた、これに近い感触と味わいなのでしょう。安心して、生のハツを味わえるタタキは最高ですね。今回は少し焼きすぎましたが…。

セロリと一緒に爽やか炒め

夏に食べたい爽やかな野菜を、ということでセロリとの炒め物を作ってみました。ハツは細めに切って、醤油で下味を付けて片栗粉をまぶして、セロリと炒めました。

ハツとセロリの炒め物
▲ハツとセロリの炒め物

シャキシャキっとしたセロリの食感とともに、ハツの濃厚な味わいが美味しい逸品になりました。ハツには疲労回復の効果があるビタミンB1が豊富です。そしてセロリにもビタミンB1とB2が豊富なのだとか。ダブルで疲労回復に効果がありそうです。

端材も残さずにシチューに

キレイな焼肉やタタキにするためにと、スジや余分な脂身を削ぎながら、肉も一緒に切ってしまい、「もったいない」と感じていました。そこで、これらを使って、煮物料理に挑戦です。たまたまデミグラスソース缶がキッチンの棚に残っていました。
赤ワインをたっぷり入れて、煮込むこと30分くらいでしょうか。ハツはもともと柔らかいのですが、スジが少し入っているからしっかり煮込んで、デミグラスソースとトマトケチャップを投入して、もう少し煮込んだら完成です。

端材を使ったハツのビーフシチュー
▲端材を使ったハツのビーフシチュー

ハツの端っこが濃厚なスープに浮いています。口に入れると、筋のところも柔らかくて、しっかりハツの味わいが感じられました。
ビーフシチューと言えば、すね肉やもも肉、変わったところでタンやテール肉などがお馴染みですが、ハツのシチューも乙なもの。濃厚な味わいになりました。

ハツ(心臓)は生まれて死ぬまでずっと動き続ける疲れ知らずの臓器です。だからなのか、ビタミンやミネラル・鉄分などが豊富に含まれています。疲労回復や免疫力向上に良いとも言われています。「疲れたなぁ」と思ったら、ハツを仕入れてたくさん食べるのがいいですね。記者の場合は、タタキがお勧めです。ただし、ハツのブロックが手に入ったらのお話しですが…。

では、牛肉珍味の旅はまだまだ続きます。