究極の赤身肉・無角和牛の料理あれこれ

「無角和牛の焼肉用を提供するから、焼肉以外の料理をしてみて欲しい」と、安堂光明会長から依頼を受けました。
受け取ったのは、カタ・モモの焼肉用です。カルビと違ってサシがあまり入らない赤身肉のため、どうしても人気は劣ります。そこで、「この肉を使って、焼肉以外にも色々な楽しみ方があることを知って欲しい」というのが、今回の安堂会長の思いでした。しかも、赤身肉で有名な無角和牛での挑戦です。赤身肉が好きな記者としては、腕も、腹も鳴るトライアルになりました。


月3~4頭出荷の希少な牛肉

無角和牛と言えば、月に3~4頭しか流通しない、知る人ぞ知る幻のお肉です。かつては1万頭近くが肥育されていた人気の和牛でした。しかし、霜降り肉がもてはやされるなか、サシが入らず、赤身肉が特徴の無角和牛は、次第に肥育されなくなりました。現在では、約200頭が肥育されているのみです。


そもそも無角和牛は山口県で交配されて生まれた品種です。肉にサシは入りやすいが体格の小さな日本の在来牛に、赤身肉が特徴で体格の大きなイギリスのアンガス牛を掛け合わせて生まれました。角がないことと、赤身肉という特長はアンガス牛から引き継いでいます。
安堂畜産は、この無角和牛を再び市場に普及させるために設立された無角和種産直拡大協議会(1996年設立)に参画し、主に流通面での普及活動に力を入れてきました。
「無角和牛の種を絶やしてはならない。種を保存して、次の世代に引き継がなければ」
獣医師でもある安堂会長には、そんな特別な思いがあります。

▲無角和牛のモモ・カタ焼肉用
▲高森牛のモモ・スライス

改めて無角和牛のお肉を見てみると、確かにサシが入っていないキレイな赤身です。モモ・カタという部位だから、そもそもサシは入り難いのですが、それにしても、鮮やかな赤身。それは、「肉のこーべや・玖珂店」で別に求めた高森牛の同じモモ肉(スライス)と比べても一目瞭然です。

これは美味い!無角和牛のチンジャオロース

安堂会長の夫人・朱美さんによると、「この焼肉用を細切りにして、チンジャオロースにするとおいしいわよ」とのこと。さっそく挑戦しました。

焼肉用(150g)をさらに細切りにしてボウルに入れて、醤油とお酒をそれぞれ大さじ1/2くらいふって、5分くらい馴染ませます。そして、片栗粉をまぶして下準備OK。
フライパンに油を入れて熱し、みじん切りの生姜を炒めて、牛肉を投入。肉が焼けてきたら細切りにしたピーマンとタケノコを入れて炒めます。


最後に、醤油(大さじ1/2)、オイスターソース(大さじ1と1/2)、砂糖(大さじ1)で味を付けて、完成です。


食べてみると、中華料理屋で食べるチンジャオロースそのものの味わい。そして、驚いたのはお肉の柔らかさ。脂身のない赤身なのにとても柔らかい。そして、濃厚なお肉の味わいを感じました。安堂家でもモモ・カタの赤身を使って、よく作るそうです。

給食で懐かしい竜田揚げを無角和牛で

記者が小学生のころ、給食に鯨の竜田揚げが出るとなると、朝からそわそわしたものです。今思うと、なぜあんなに美味しかったのか、不思議に思うほどです。
そこで、赤身の牛肉であの味を再現することにしました。しかも希少な無角和牛。鯨肉より希少価値の高い逸品になりました。

ボウルにモモ・カタの焼肉用(300g)に、みりん(30cc)、酒(30cc)、しょうゆ(60cc)、塩少々、おろし生姜とニンニクを入れて混ぜ合わせて、冷蔵庫で30分以上寝かせます。


片栗粉を一切れずつまぶして、180℃の油で揚げます。このとき、焦げないように気を付けましょう。記者はいくつか焦がしてしまいました。


これまたお肉の柔らかさに驚きました。そして、赤身肉の味わいに調味料の下味が良く染みていて、ビールがすすむ逸品になりました。
給食の鯨の竜田揚げとはやはり、味わいも食感も違いますが、美味しくいただきました。

モモのスライス肉で、郷土料理・牛肉の網焼きに挑戦

モモのスライスは、すき焼きが定番です。しかし、今回は網焼きに挑戦しました。網焼きとは、赤身肉を使って、網で焼いて脂身を落とし、最後に甘辛の醤油ダレにくぐらせた料理です。安堂会長によると、広島から西の地域でよく食べられるとか。だからこの地域では赤身のモモ肉の消費が多いそうです。

さすがに家庭で網焼きは難しいので、フライパンを使いました。
フライパンにモモ・スライスを油も引かずにそのまま投入し、焦げないように炒めます。テフロン加工のお陰で、いい感じに焼けました。ここであまり焼き過ぎるとお肉が硬くなるので気を付けましょう。
火をさらに小さくして、ほとんど余熱によって甘辛の醤油ダレをフライパンに入れ、お肉に馴染ませます。甘辛の醤油ダレは、すき焼きの割したと同じ成分ながら、ちょっと濃いめがいいようです。


食してみれば、赤身肉にタレがしみ込んで、これまた美味。脂が少ないのも嬉しいですね。ただし、ご飯がいくらでも食べられるその味わいは、ダイエット中の身には危険です。
さて、牛網焼きは、安堂グループ直営のレストラン・高森亭の人気メニューです。醤油ダレにも秘密があるようなので、そっと店長に聞いてみましたが、やはり教えてはくれませんでした。本物を食べたい方は、高森亭に行きましょう。

昭和30年代の終わり、1万頭が肥育されていた無角和牛を絶滅の危機に追いやったのは、バブル景気やグルメ志向と共にやってきた霜降り肉への傾倒でした。しかし、ヘルシー志向の高まりや、肉本来の赤身の味わいへの目覚めなど、近年ではずいぶんと赤身肉にも光が当てられるようになりました。
記者も50歳を過ぎてから赤身肉の魅力を知り、還暦が近くなったこの頃では、霜降り肉を拒絶するほど嗜好が変わりました。これからもっと、赤身肉のレシピを研究したいと感じた今回の珍味の旅でした。

では、未知なる部位と料理を求めて、牛肉珍味の旅はつづきます。

究極の赤身肉である無角和牛のお肉は、通販で求めることができます。
詳しくは「JAタウン 無角和牛」で検索、又は下のURLへ。数量限定・予約販売にご留意ください。

▼無角和牛の予約販売「JAタウン」
「無角和牛」 ミニステーキ&焼肉セット
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歴史物語 第27話「角のない牛」、第28話「無角和牛を救った恩人たち」
http://www.anchiku.co.jp/history27.html
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アナザーストーリー13『阿武町に行って知る無角和種の素晴らしさ』
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牛肉珍味①「希少種・無角和牛のこれまた激レア!熟成肉」実食レポート
http://www.anchiku.co.jp/jyukuseiniku_report.html