和牛オリンピックに森田さん(岩国市)の肉牛が県代表に!

― ― 第12回 全国和牛能力共進会 鹿児島大会(2022年10月6~10日)― ―


▲山口県の代表に選ばれた七十三郎号と生産者・森田さん、安堂社長(安堂畜産)

 全国和牛能力共進会とは、全国の和牛を一堂に集めて、その優秀性を競う大会です。12回目となる今大会は鹿児島県で開催。過去最多の41道府県が参加し、各県での選考を勝ち抜いた約440頭が一堂に会します。その規模といい、5年に一度、開催地を変えて行われることから、「和牛のオリンピック」とも呼ばれています。
 大会は大きく2つに分かれています。牛の改良の成果を競う「種牛の部」と牛肉の肉質を競う「肉牛の部」です。その内、肉牛の部は月齢24か月の肉牛で競います。通常は30か月まで肥育して出荷されるところ、この短い期間でいかに肉質の良い肉牛を育てることができるのか。生産者の技術力がよりシビアに試される大会なのです。

県内予選を勝ち抜く

 「肉牛の部」の山口県代表には、安堂畜産と縁の深い森田真二さんの肉牛・七十三郎(16024-99513)が選ばれました。
 山口県は、和牛ブランド「やまぐち和牛燦(きらめき)」を立ち上げるなど、肉牛の生産に力を入れてきました。県代表の選考会には、県内の名だたる畜産農家が名乗りを挙げ、肉牛の外見に加えてエコーによる審査が実施されています。そのなかで、森田さんの七十三郎が見事、選考を勝ち抜いたのです。
 「本当にびっくりしましたよ!ありがたいことです。恥をかかないように、代表として頑張りたいと思います」と森田さんは、驚きを隠せない様子。しかし、2008年(平成20)には、全日本牛枝肉コンクール(第48回農林水産祭参加表彰行事)で最高峰となる名誉賞を受賞した経歴を持ちます。「儲けより名誉のために」と、誠実に牛と向き合い工夫を凝らしてきた成果だと言えます。
 さらに同じ地元で長年協力関係にある安堂畜産にとっても、嬉しいニュースでした。選ばれた七十三郎は地元周東町(高森)生まれの高森育ち。生粋の高森牛だったのです。
「5年に一度しかない大会ですからね。こんなに生粋の高森牛が選ばれるのは初めてのことで、夢のようです」と、安堂卓也社長(安堂畜産)。大会の終盤に行われる出品牛肉の競りに参加して、「ぜひとも競り落としたい」と、意気込みを語ってくれました。
 加えて、県の職員たちもこの七十三郎には特別の期待を寄せていました。というのも、この肉牛は山口県が新たに開発した種牛・殿池久を父に持ちます。大会で評価を受ければ大きな成果につながります。
 なお、今回の選考では、山口県から4頭の肉牛が選ばれています。その内の2頭が高森牛です。
生産者は勿論、地元の畜産業者、さらには山口県の期待を背負って、肉牛の鼻息は一段と荒ぶるのでした。

大会の審査、果たしてその結果は…

大会の審査は、肉量・肉質、そして脂肪の質などによる20の項目によって行われます。


▲森田さんの肉牛・七十三郎の枝肉(見事な霜降り)

 軒並み肉質等級最高ランクのA5評価が出るなか、七十三郎もA5評価でした。しかも、どれくらいサシ(霜降り)が入っているのかを示すBMS(牛脂肪交雑基準)も最高ランクの12番。その他にも肉のしまり等の項目で最高評価を獲得しました。
「全国の枝肉がずらりと並ぶ姿は、それはもう壮観でした」と、大会に足を運んだ安堂社長。それもそのはず、森田さんの肉牛が出品された「肉質の部」の8区(去勢肥育牛)は、39道府県からの出品が集まった最大の激戦区。各県の応援団がお揃いの服で盛り上がるなど、会場は熱気に包まれていたそうです。
 「そのなかでも、森田さんの牛は、無駄な皮下脂肪が少なくて、ロース芯も大きくて立派でした」。上位入賞への期待も高まりました。

 しかし、惜しくも優等10席のなかに入ることはできませんでした。

ぜひ地元に味わってもらうために

 審査結果が発表された後、恒例の競りが始まりました。全国から出品された選りすぐりの肉牛の枝肉が競り落とされていきます。会場には、これまた全国から肉の卸売業者たちが勢ぞろい。参加社名のリストには名だたる企業名が並んでいました。安堂畜産もその一つ。毎月のように競りに参加する安堂社長にとっても、「独特な雰囲気」だったようです。
 普段の競りなら、キロ当たり2,000円台で値が動くところ。ところが今回は全くの別物です。優等上位の枝肉になると桁が一つ違います。枝肉重量が500kg前後ですから、驚きの高値。まるでマグロの初競りのようです。
 安堂社長が狙うのは勿論、森田さんの七十三郎の枝肉です。「県の代表として全国で高い評価を得たこの高森牛を、ぜひ地元の人たちに味わって欲しい」。そんな使命感のなか、競りには慣れている安堂社長もさすがに緊張していました。
 通常の倍以上の高値で、七十三郎は安堂畜産が競り落としました。会場に競り番号と会社名がアナウンスされるなか安堂社長は、今まで感じたことのない高揚感に包まれたといいます。

 第12回の和牛オリンピックは盛況のうちに幕を閉じました。種牛の部では、開催地・鹿児島県の生産者が名誉賞を獲得。肉牛の部では、お隣の宮崎県の生産者が名誉賞を受賞しています。どの部門でも、鹿児島県、宮崎県、島根県などの産地が熾烈な闘いを繰り広げました。山口県から出品された4頭はいずれも好評価を受けましたが、等賞に入ることは叶いませんでした。
 次回の和牛オリンピックは5年後の2027年、北海道で開催される予定です。北海道での山口県産牛、そして高森牛の躍進が期待されるところです。

【お知らせ】和牛オリンピック出品の精肉の販売について

 和牛オリンピックで高い評価を得た肉牛・七十三郎号の精肉は、安堂畜産直営店・肉のこーべや玖珂店にて、11月から販売される予定です。

 なお、この記事執筆中に速報が入りました!
 七十三郎号のモモ肉は牛タタキ・ブロックで販売予定とのこと。試食した安堂会長によると、非常に甘みのあるお肉だったそうです。発売が待ち遠しくなりました。